若頭、今日もお嬢を溺愛する
駅前のレストラン。
雷十、杏子、笹美、昴と他校の男子二人。
異様な雰囲気で、ボックス席に座っている。

「雷十」
「はい」
「顔、怖いよ」
「そうですか?」
「みんな、怖がってるよ」
「でも、こんな顔なのでどうしようも……」
「あんたのせいで、雰囲気が悪い!!笑って?」
杏子が微笑むと、自然と雷十も笑顔になる。

「よし!そんな感じ!」
「はい!」

「可愛い…」
「あ?今、何っつった?」
思わず、男子の一人が杏子の笑顔を見て呟く。
雷十はすかさず、その男子を睨み付けた。

「雷十!!」
「あ…ごめんなさい!杏ちゃん、怒らないでください」
「あんた、出ていけ!!全然、楽しめない!」
今度は杏子が雷十を睨み付けた。

「…………では、少しゆっくり煙草を吸ってきます」
「ん。行ってらっしゃい」

雷十が席を外し、少し和やかになる。
「ごめんなさい!雰囲気、悪くして!」
杏子が頭を下げた。

「いや、本物のヤクザなんだよね?あの人」
「はい」
「スゲー!」
「杏子にベタ惚れなの」
「へぇー!とりあえず、なんか食べよ!」

「笹美と杏子ちゃん、何飲む?俺、入れてくるよ!」
男子の一人が声をかける。

「私、オレンジー!」
「私は、お茶で…」
「え?杏子ちゃん、お茶?」
「はい。ジュースはちょっと……」

杏子は生まれつき身体が弱く、薬を常用している。
薬の関係で、ジュースはなるべく控えているのだ。
でも、病気のことを言うと雰囲気が悪くなる。
雷十のせいでかなり雰囲気を悪くしたのに、益々病気のことを言えるわけなかった。
「ん。わかった!」

「━━━━━━でさ!もう笑いが止まらないのなんのって!!」
「そこまで、笑うことないでしょ?笹美」
「だって、一ヶ月毎日だよ(笑)?
一日一回、告白されるなんて……凄すぎて笑うじゃん!」
「私もびっくりだったけど……ある意味、嫌がらせかと思うくらい……」
「まぁ…確かに、杏子ちゃんびっくりするくらい可愛いもんなぁ!」
「そうですか?」
「うん!
昴に、可愛さ半端ないよ?って聞いてたんだけど、想像以上だったから」
「あ…////ありがとうございます////」


「笹美、ありがとね!」
「んー?」
笹美とトイレにいる、杏子。

「誘ってくれて。なんか、楽しい!」
「フフ…良かった!雷十さんも気を遣ってくれてるみたいだね!あれからちょっと遠いとこから見てるだけみたいだし」
「うん…私が怒ったからじゃないかな?」
「いや…雷十さん、たぶんだけど…その杏子の怒った顔でさえ、可愛いって思ってたと思う」

「は?」
「フフ…愛されすぎは、大変ね!」
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