若頭、今日もお嬢を溺愛する
手紙
「じゃあね、笹美!」
「うん!また、卒業式で!
それまでにまた遊びに行けたらいいね!」
買い物後、チョコを笹美の家で一緒に作り迎えの車に乗り込む、杏子。
窓を開け、小さく手を振った。

「上手くできました?チョコ」
運転席から瓜生が声をかけてくる。
瓜生は雷十の右腕のような人間で、部下の中で雷十が一番信用している人物だ。

「うん、甘さ控えめで良い感じだよ!」
「そうですか。良かったですね!」
「ねぇ、雷十はいつ帰ってくるの?」
「今日は、夜中になると思います。
先にお休みになられた方が良いかと……」
「そっか」

屋敷に着き、組員達が挨拶をする。
「お嬢!!お帰りなさい!!」
「ただいま。
これ、みんなで食べて?」
近くの組員に大きな袋を渡す。

「何すか?」
「チョコ」
「え!!?」
「みんな、嫌い?甘い物。
でもね、甘さ控えめだよ」

「お嬢、いいんですか?若に怒られますよ!」
後ろに控えていた瓜生が心配そうに言った。
「うん、だから今のうちに!」

「じゃあ…ありがたく、いただきます!ありがとうございます、お嬢!」
瓜生が微笑む。
「ううん。
……………どうせ、雷十だって貰うんだろうから…」
「え?お嬢?」
「ううん…私、今日はもう寝るね!」
「はい…」

雷十にあげるチョコを、テーブルに置きベットに横になった杏子。
「今年は何個貰って帰ってくるのかな?」

クラブに行っている、雷十。
毎年かなりの数のチョコや、プレゼントを持って帰って来る。
雷十は杏子に見せないように隠しているつもりなのだろうが、杏子は知っていた。
そして女性物の香水の臭いもさせて帰って来る。

ふと、高校の鞄が目に入り“手紙”が見えた。
「あ、そういえば読んでなかったな」
ベットから下りて、手紙を取り封を開けた。

笹美はキモいから捨てろと言っていたが、杏子は正直嬉しかった。
【鶴来 杏子さん
急にこんな手紙、気持ち悪いと思ったよね?
ごめんね。
でも、こうゆう気持ちの伝え方が君に届くんじゃないかと思って、手紙を贈りました。
僕は、隣のクラスの手毬(てまり) 清二(せいじ)と言います。
僕は鶴来さんのことが好きです。
良ければ、僕のことを知ってほしいなと思ってます。もし、良ければ……連絡ください。
手毬 清二
0X0-XXXX-XXXX】


「手毬くん?うーん、知らないなぁ。
ん?手毬…あ!呉服屋さんのかな?」
杏子は、文悟の部屋に向かった。
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