若頭、今日もお嬢を溺愛する
「「綺麗……」」
杏子と手毬の声がハモる。

「え?」
「あ、ご、ごめん…!」
「ほんと、綺麗ね!
手毬くん、凄いね!こんな素敵な髪飾りをデザインできるなんて……!」
「あ、いや…僕は、鶴来さんのことを言ったんだよ…!」
「え…////そ、そんな…恥ずかしいよ…」
思わず、俯く杏子。

「ご、ごめんね!つい、出ちゃって!」
「ううん…」
「あ、ねぇ!それ、今つけて見せてよ!」
「え?あ、うん」
杏子が簡単に髪を纏め、カチッとバレッタをつけた。

「………どうかな?」
「うん!似合ってる!」
「ほんと?フフ…ありがとう!」
「良かった!鶴来さんのこと考えて作ったから。
僕…彼女いたことないから、よくわからなくて…」
「あ、うん…」
「あ、ごめん!恩着せがましいよね?
そんなつもりじゃなくて……」
「きっと……手毬くんは純粋なんだね!お手紙もそうだけど……」

「あ、それは!鶴来さんが憧れてるって言ってたから……」
「え?」
「僕達、高一の時に話したことあるんだよ?」
「え?そうなの?ごめん、覚えてない…」

「当たり前だよ!僕、見た目が全然違うから!」
そう言って、手毬はスマホの画像を見せてきた。
そこに映っていた手毬は、丸々と太っていた。

「え?こ、これ、手毬くん?」
「うん」
「そうだったんだ!
………ってことは…あ!」
「思い出した?」
「うん!あの時の!!」
「“ボール”だよ!」
手毬はかなり太っていた為、当時“手鞠”と“ボール”をかけてボール言われてからかわれていた。

「へぇー!ダイエットしたの?」
「うん!あの時に鶴来さんを好きになって、痩せたらつり合うかなって思って……!」
「まさか、それで?」
「うん、だからあえて手紙が告白したんだ」

【手紙って心がこもってて素敵だね!
今時だからこそ、なんか新鮮で…気持ちが届く気がする】
何気なく、杏子が話したことだ。

「なんか……嬉しいな…」

「え?」
「あんな小さなこと、覚えててくれたなんて…」
「うん」
「それに、何より……」
「ん?」
「手毬くんが、笑わないで聞いてくれたことが嬉しかったの!だって、普通なら退くでしょ?手紙なんて……」

「そんなの、当たり前だよ!」

「え?」
「好きな子の言ってたことだよ?
忘れるなんて、笑うなんてあり得ないよ!
ましてや、退くなんて……」

どうしてこんなに、真っ直ぐなんだろう。
雷十とは違う、澄んだ瞳。
純粋な想い。

「もう、やめて…」
「え?鶴来さん?」
「そんな綺麗な目で言われたら、なんか…すがりたくなる…!」
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