若頭、今日もお嬢を溺愛する

｢え？｣
｢今日、きっと雷十は香水の臭いを沢山つけて、沢山のプレゼントを抱えて帰ってくる。私はまた…それに言葉にならない、嫉妬をする。
だからね……一人でいたくなくて……
今日手毬くんに会おうと思ったのも、それが理由ってゆうか……
それなのに手毬くんが、あまりにも綺麗で純粋だからすがりたくなる。
……………私、最低でしょ？
手毬くんの気持ちに答えられないくせに、頼ろうとするなんて……
だから、帰ろ？
待ってね、誰かに送ってもらうように言うから｣
踵を返し、近くにいる瓜生に向き直った。

｢瓜生さん、手毬くんを送っ━━━━━━｣
気づくと、手毬に抱き締められていた。

｢え━━━━！！？お前、何…を……！｣
瓜生も思わず、フリーズしている。

雷十と違う━━━石鹸の爽やかな香り、優しい腕。
手毬の優しさに包み込まれている感覚だった。

でもやっぱり…………

雷十がいい━━━━！！！！

｢手毬くん！離して！！｣
杏子がもがく。
｢━━━━━━！！？
ご、ごめんね！！！なんか、無意識に…！！｣
バッと離す、手毬。

｢ううん…
大丈━━━━━え！！？｣
気づくと、手毬は瓜生に胸ぐらを掴まれていた。
｢てめぇ…わかってるよな……！？｣
｢はい、すみません！！｣
｢瓜生さん！離してあげて！｣
杏子は瓜生にしがみつき、懇願する。

｢………はい。
お嬢、帰りますよ｣
腰を支えられ、屋敷に促された。
｢うん。
手毬くん！またね！バレッタ、ありがとう！｣
瓜生に促されながら、振り向いた杏子が手を振る。

｢うん……｣
手毬も小さく、手を振ったのだった。


｢お嬢、大丈夫でしたか？｣
｢うん、でも…私が悪いんだよ。変なこと言ったから…｣
｢貴女は何故、他人のことばかり……｣

｢なんであんなこと言っちゃったんだろ……？｣

｢寂しいってことですよね？｣
｢そうかも…｣
｢でも、このバレッタ…｣
｢え？｣
｢まさか、お嬢が受け取るなんて思いませんでした｣
｢あ、うん…いや、ほんと可愛いなって！
普通に売ってたら、買うかもって思うくらい。
やっぱ……ダメだったかな？｣
｢お嬢も言ってたでしょ？
若が持って帰って来るプレゼントに嫉妬するって！｣

｢え？あ、そう…か…そうだよね……
やっぱ、返さなきゃだね！
まだ、手毬くんいるよね？｣
杏子は、急いで門を再度出ていく。

｢は？お嬢！！？｣
幸いまだ近くにいた手毬の方に駆けていきながら、声をかけた。

｢手毬くん！！｣
｢え…？鶴来さん？｣
｢やっぱり…バレッタ、貰えない。
逆なら、嫌だから！｣
バレッタを外そうとする。
｢………ったい！｣
髪の毛がバレッタに絡まり、思わず顔を歪ませる。

｢鶴来さん！？大丈夫！？｣
｢髪の毛が絡まって…｣
｢待って、僕が…！｣
手毬が優しく髪の毛に触れ、ゆっくり髪の毛を解く。

手毬は杏子を抱き締めるように、後頭部のバレッタを取ろうとしていた。