若頭、今日もお嬢を溺愛する
ちょうどその頃、雷十と大悟の乗った車が屋敷に着こうとしていた。

「雷十、どうするの?こんな沢山のバレンタイン」
「処分するに決まってるだろ?
明日、杏ちゃんがくれるチョコしかいらない」
「だったら、受け取らなきゃいいのに」
「間に合わないんだよ!?
断る前に、どんどん渡される。
………それを言うなら、大悟も同じだろ?
お前の方が多いしな!」
「まぁね」

「え━━━━━!!!?なん…で…?」
そこへ、運転をしていた辻倉の驚いたような呟きが聞こえてきた。

「何だ?」
「辻倉、どうしたの?」
雷十と大悟が不思議そうに、辻倉を見た。

「あ、いえ!何も!
勘違いっす!
…………お嬢が、こんな遅くにいるわけねぇし……」

「は?杏ちゃん?」
「杏がどうかしたの?」

「あ、いや…そこにいたような気が……」
門前で車を止め、辻倉が恐る恐る言った。

「「は?」」
二人は凄い勢いで、外に出た。

━━━━━━━━!!!!?
少し離れた杏子と手毬の光景に、雷十は憤怒以上の殺意が芽生える。

「杏!!何やってんの!!?」
雷十のただならぬ気配に、大悟が杏子に声をかけた。

「え!!?ぱ、パパ?
━━━━━━━雷十!!!?」
弾けるように、雷十と大悟を見る杏子。

「杏、早くおいで!
こんな夜遅くにダメだよ!しかも、男の子と!」
「うん。あの、手毬くん」
「ちょっと待ってね、もうすぐで取れるから」
「うん…」

「早く…杏ちゃんから離れろ……」

「━━━━━━!!!?まずい!!
杏!!早く!!」
雷十の殺意に、大悟が杏子を急かす。

「え?ちょっと待って!!髪の毛が!!」
「━━━━━取れた!!」
「え?あ、ありがとう!
それで……やっぱ、貰えない!ごめんね!」
「うん、わかった」
「でも、ありがとう!今度、買いに行く!
それなら、いいよね!ほんとに可愛いよ、そのバレッタ!」
そう言って、足早に雷十と大悟の元に向かった。

「雷十、パパ、お帰りなさい!」
「ただいま。あの子は誰?」
「え?同じ学校の同級生」
「こんな遅くに、まさか…あの子と出かけたの?」
「え?ま、まさか!そんなことしないよ!」

「じゃあ、何者ですか?」

「え……らい、と…?」
「何をしてたんですか?杏ちゃんの髪を触るなんて……あり得ない!!」
「バレッタを取ってくれただけ。
変な意味はない!
それより、もう疲れた。寝るね!」

━━━━━━━━━!!!!
屋敷に戻ろうとする杏子の手を掴み、引き寄せた雷十。
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