若頭、今日もお嬢を溺愛する
それから、虎太郎のバイト先のカフェに向かった一行。

当然、雷十もついて来て少し離れた席に瓜生と座っている。
そしてカフェ周りは、部下に囲わせていた。

「雷十」
「はい」
「こっち来ちゃダメだよ」
「わかってます。でも、杏ちゃんに危害が加わったら、容赦なく殺りますよ」
「こ、怖いよ…」
「大丈夫です。杏ちゃんを悲しませること、苦しませることはしません」


「凄いな…」
「え?」
「オーラ…あの二人(雷十と瓜生)のオーラだよ。
スッゴい存在感がある」
昴が少しブルッと震えながら言った。

「でも、おじぃ様はもっと凄いよ」
「杏子のお祖父さん?」
「うん。いつだったかな?
おじぃ様はいつも宴会の中盤で帰るんだけど、その日は一度帰って戻ってきたの。
宴会中に、部下達が酔っぱらって喧嘩になったことがあって……もう宴会場が、ぐちゃぐちゃで……
そこにおじぃ様が戻ってきて、扉を開けて中に入っただけでピタッて喧嘩が止んだんだよ?凄いでしょ?」

「「「「凄い……」」」」
「さ、さすが…ヤクザの組長ね……!」
「でも、見た目は優しそうなお祖父さんだよね。僕的には、お祖父さんにいつもついている人の方が怖いよ」
「浅井さんかな?」
「たぶん……」
「浅井さんは、おじぃ様が一番信頼してる部下だよ。
おじぃ様に崇拝してるんだよ。
だから基本的には、おじぃ様の言うことしか聞かないの。雷十やパパにも普通に言い返すし。
私には優しくしてくれてるけど…」
「杏子ちゃんの親父さんは変な言い方だけど、普通の人なんだよね?」
「うん。ちゃんとした会社社長だよ」
「不思議だな」
「そうだよね。おじぃ様の後は、きっと雷十が継ぐんだろうし」
「兄弟なんだよね?」
「昔はね。私とお付き合いするってなった時に、抜いてくれたの。
今は雷十は、風間姓だよ」

「手毬くんは、大学はどこ?」
「◯◯大だよ」
「え?私達と一緒だ!」
「そうなの?」

「手毬、モテるだろうなぁ!大学」
「杏子ちゃんも、ヤバそう!!」
「どうやって痩せたの?ジム?」
笹美が興味津々だ。
「ジムと、空手だよ」

「へぇー!だからか!結構、筋肉スゲーよな」
「ほんと、凄っ!!」
昴と虎太郎が手毬の二の腕に触れた。
「ほんとだぁー!」
笹美も触れる。
「てか!見て!杏子の二倍はある!」
笹美が杏子の二の腕に触れながら、続けて言った。

「え?そんなわけないよ!
それに、手毬くんスラッとしてるよ」
「僕、腕は太いよ。骨が太いんだ。
だから痩せても、引き締まっただけで太さは変わらないよ。正直、鶴来さんの手…簡単に折れそう……」
「そ、そうかな?」

「確かに!杏子、細いもんね(笑)!」

みんなに笑われる、杏子だった。
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