若頭、今日もお嬢を溺愛する
「どこ行くの?」
「ん?まずは、着飾らないと!」
「え?」
雷十は微笑み、杏子の手を引いた。

「杏ちゃん、俺がコーディネートしていいですか?」
「うん、いいよ」
ショップに入り、杏子に色々試着させる。

「杏ちゃん、次はこれです。
…………んー、次はこれです」

何着か、試着して━━━━━━

「これにします!
杏ちゃん、今着替えてください!」
「うん」

「…………可愛い~!それに、やっぱ綺麗だ////!」
出てきた杏子を、惚れ惚れとして見ている。
「そう?ありがとう!」

「よし!次はアクセです!」
「え!?アクセサリーまで!?」
「当たり前ですよ!全身コーディネートなんですから!」

それからアクセサリー、バック、靴……全て雷十がコーディネートし、杏子はされるがままだ。

「なんか…こんなに着飾ったの初めて!
ありがとう!雷十」
「フフ…まだまだですよ!今日一日は、半分も終わってません!」

「どこ行くの?」
「決めてません。夕食までは、ノープランです」
「………なんか、意外…」
「え?」
「いつもなら、全部決めてるでしょ?」
「杏ちゃんが“普通”のデートがしたいって言ったから」
「え?」
「ゆっくり街を雷十と歩いて、気になるショップに入って、小腹がすいたら何か食べる━━━━そうゆう普通のデートがしたいって」
「うん、言ったことある」
「今日はそうゆうデートです」
杏子を見下ろし、微笑み雷十。

「………雷十」
「はい」
杏子は背伸びをして、雷十の口唇にチュッと軽くキスをした。

「……/////」
「////杏…ちゃん…////?」
「ありがとう、雷十!
私はね、雷十がいつものように傍にいてくれたら十分なんだよ?」
「はい」
「でも……
やっぱ、嬉しい!!」
「はい!」
「本当は誰か傍につけなきゃいけないし、こんなただプラプラするだけの無防備なデートなんてあり得ないよね?」
「そうですね。俺の立場上……」
「それなのに“私の為に”してくれたことが、凄く嬉しい!!ありがとう!」
満面の笑みの杏子。

雷十は、
「その笑顔だけで十分ですよ」
と言って、二人はまた口唇を重ねた。

「雷十!クレープだ!」
「食べますか?」
「うん!」
「じゃあ、並びましょう!」
「うん!」
「杏ちゃん」
「ん?」
「…………少しだけ、待っててもらえますか?
すぐに戻ります!」
雷十は目の端で後ろを確認すると、杏子に言って頭を撫でた。
「え?あ、うん…」

雷十の雰囲気に、杏子は思う。
(あ、仕事モードだ)と━━━━━━━

やはり、雷十とは“普通”は望んではいけないのだ。
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