若頭、今日もお嬢を溺愛する
「うるさいんだよ……クソガキが……
どんな理由があっても、杏ちゃんを殴っていい理由にならねぇんだよ!!?」
「雷十!!やめて!!」
杏子が必死に呼びかけるが、聞こえていない。

「さぁ…落ちろよ、地獄に……」
雷十は、首をコキッコキッと鳴らす。

この行為に、部下達に緊張が走る。

「来るな…」
「そんな、怖がるな…全く可愛くない。
俺は可愛い奴が好きなんだ。杏ちゃんみたいな」
「ひっ!!た、頼む!!助けて……くれ…」
「両手…」
「え……」
「杏ちゃんを抱っこして、塞ごうと思ったんだ。
そうじゃないと、お前等なぶり殺しそうだから。
でも杏ちゃん…抱っこさせてくんない。
だから、もう…終わりだよ、お前等……」
「お願…いしま…す」

「お前等が悪いんだ。
俺の杏ちゃんを傷つけたんだから……」

「雷十!!」
すると杏子が雷十と男の前に立ちはだかった。
そして雷十の頬を両手で包み込んだ。

「え……杏ちゃん…?」
「うん、杏子だよ!!わかる?」
「…………はい」
「今日は私の為の日なんだよね?」
「はい」
「じゃあ…私のお願い聞いて?」
「はい」
「帰ろ?みんなで、お家で遊ぼ?」
雷十はゆっくり、自分の頬に触れている杏子の手の上に自分の手を重ねた。
そして、深呼吸した。

「はい!」

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「な、何故!!?」
「お嬢、弱いっす!!」
雷十や瓜生、辻倉達部下とすごろくをして遊んでいる、杏子。

「ち、違うもん!このサイコロが悪いの!」
「そうですね!瓜生、このサイコロが悪い!
違うヤツ持ってこい!」
「はい?何言ってるんですか?
サイコロが悪いわけないでしょ?
お嬢の運の問題………」
「あ?」
「あ、いや…」

「こら!雷十!瓜生さんを睨み付けないで!」
「だって、杏ちゃんの運が悪いって言うんですもん!」
「とにかく!私が負けたから、一番は…辻倉さんね!
いいよ、デコピン!」
辻倉に向かって、前髪を上げ額を出した。

「え…!?マジすか!?いや、結構です……」
「え?だって、そうゆうルールでしょ?
あ、でも!手加減はしてね!
みんな、力が半端なく強いから。はい、どうぞ?」
「お嬢…どうぞって……」
「早く!!ずっとおデコ出してるの、恥ずかしいの!」
「若!お嬢を止めてくださいよ!俺には無理っす!」
「辻倉、いいよ。
杏ちゃんが、いいよって言ったから」
「えーー!!」

『辻倉…可哀想……』
『でも…バカだよなぁ、辻倉……
こんな時は、わざとに負けないと!』
組員達が、口々に呟いている。

「じゃあ…お嬢!!失礼します!!」
そう言った、辻倉。
チュッと音がをさせ、杏子の額にキスをした。
「━━━━━━!!!!?」

「辻倉……!お前っ…!?」
「辻倉ぁぁぁーーー!!!」

この後…辻倉が、雷十にぼこぼこに殴られたのは、言うまでもない━━━━
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