若頭、今日もお嬢を溺愛する
真弓「私まで、すみません」

笹美「ねぇ、敬語やめない?」
真弓「え?あ、そうだよね」
笹美「真弓って呼んでいい?」
真弓「うん!」

杏子「じゃあ、私も!」

真弓「うん!笹美ちゃんに、杏子ちゃん!」

杏子「真弓」
真弓「ん?」
杏子「一つ、聞いてほしいことがあるの」

真弓「うん」

杏子「私ね……」
真弓「うん」
杏子「実家が、鶴来組っていう極道一家なの」
これから、仲良くしていく真弓に嘘はつきたくなかった、杏子。
意をけして言った。

真弓「…………知ってるよ」
真弓は杏子を見据えて、穏やかに答えた。

笹美「知ってたの?」
笹美もびっくりしている。

真弓「鶴来組って有名だし、入学前から噂をよく聞いてたから」
杏子「そっか……」

真弓「関係ないよ」

杏子「え……?」

真弓「確かにね、怖いと思ってる。
私はそうゆう世界を全く知らないし、縁がないと思ってたから。
でもそんなこと関係なく、私は杏子ちゃんと友達になりたい!」

杏子「ありがとう…!!!」

真弓「私も一ついいかな?」

杏子「うん」
真弓「私の両親、駆け落ちして一緒になったの。
だから、誰も頼る人がいなくてかなり貧乏で……
そんな私と友達ってことで、二人にも迷惑かけることがあるかも?
でも、二人は初めて信じ合えそうな友達なの。
だから━━━━━━━」

杏子「大丈夫だよ!」
笹美「全然、平気!!」

真弓の不安を打ち消すような、杏子と笹美の言葉と表情。
真弓は心底、杏子と笹美に出逢てよかったと噛みしめていた。

それからも楽しく時間が過ぎていく。
そこへ瓜生が声をかけてきた。

瓜生「お嬢。もうそろそろ帰らないと、大悟様が帰ってきます」

杏子「え?もう?まだ、二人とお話したい!」
瓜生「ダメです!オヤジにも怒られます!
何より……若が、許さない!」

杏子「………うん」

瓜生「お嬢は“特別”なんですから!」

杏子「わかってるよ。でも、もう少しだけ……」
瓜生「お嬢!!
だったら“無理矢理”連れて帰りますよ?」
瓜生の視線が鋭くなる。

杏子「わかった!!わかりました!!
━━━━━━笹美、真弓。ごめんね、帰らないと………」

笹美「ん」
真弓「また、明日ね!」
三人は手を振り、杏子は瓜生を連れ立って去っていった。

杏子「もっと話したかったなぁ~」
帰りの車内で呟く、杏子。
瓜生「すみません」
杏子「瓜生さんは悪くないでしょ?
しょうがないよ。私は…極道の孫娘で、雷十の彼女なんだから。
……………でもね…」
瓜生「はい」

杏子「たまには、お友達と思う存分楽しみたいなぁ~」

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