若頭、今日もお嬢を溺愛する
夏輝
「は?ダメです!!!
ダメに決まってます!!!
杏ちゃん、今から監禁しましょうか?」
雷十が朝から、声を荒らげている。

ある日の休日。
杏子は文悟、大悟、雷十に、笹美と真弓の三人で旅行に行きたいと相談していた。

「雷十はなんで、そんなこと言うの?
パパ!雷十を説得して!!」
「悪いけど、パパも納得できないな……!
女の子三人で旅行なんて、危ないよ?」

「パパまで……
おじぃ様!何とか━━━━━━」

「ダメだな!」

「は?」

「何があるかわからねぇ……
杏子は、鶴来組の“宝”だからな」

(よし!こうなったら………!!!)

「修学旅行!!!」

「「「え?」」」

「私、知ってんだからね!
修学旅行に行けなかった理由」

「あ、杏ちゃん?」
「杏、理由って……?」
「杏子?」
杏子の言葉に、明らかに三人の雰囲気が変わる。

「三人が裏から手を回して、行けないようにしたこと。
━━━━━━━浅井さんが、校長を脅したんでしょ?」

「あのね、杏ちゃん、これには深ーいワケが……!」
「うるさい!!!」
弁解しようと、雷十が杏子の頭に触れようとする。
が、それを杏子は更にはね除け言った。

「杏、知ってたんだ……」
「杏子、当たり前だろ?修学旅行なんて、あんなガキの集まり……行かせられるわけがない!
特にお前は、病気のこともあるしな」

「だからって、校長脅すことなかったでしょ?」

「杏子!!
とにかく、認めねぇぞ!!」
「この、クソじじぃ!!!」

「あ?杏子、てめぇ…女がそんな口の聞き方すんじゃねぇ!!?」
「お嬢!!いくらなんでも、オヤジにその口の聞き方はダメですよ!!?」

「いいよ、殺ればいいでしょ?
言っとくけど、私は怖くないんだからね!!鶴来組なんて!」

「杏!!!」

「何よ?」

「いい加減にしろ!!」
「え……ぱ、パパ…?」

「俺がついていく」
いつも物腰の柔らかい、大悟。
その大悟が、怒りに震えていた。

杏子は、生まれてから“一度も”大悟に叱られたことがない。叱るのは文悟の役目のようなモノだったのもあるが、基本的にはいつも優しく杏子を見守ってきた。

その大悟の怒りの表情に、杏子は心底驚愕していた。

「これが条件だ!
それも受け入れないなら、本当に雷十に監禁させる。
どうする?」

「……………わかった」
静かに頷く、杏子。

「あと……」
「何?」
「おじぃ様に謝れ」
「え?」
「杏もわかってるよな?」

「…………うん。
おじぃ様、ごめんなさい」
ここで頭の冷えた杏子は、文悟に頭を下げ言う。

「もういい。
わかってるから。
杏子は悲しかっただけだってな。
ワシ達も、悪かった」
文悟も杏子の頭をポンポンと撫で、言ったのだった。
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