若頭、今日もお嬢を溺愛する
「ちょっと、杏子!!笑わないでよ!!」
「あ、ごめんね!
みんな考えること、同じなんだなぁって…!」

「フフ…男って、バカよね(笑)!!」
「そうね!」
微笑み合う、杏子と笹美。

「笹美、杏子ちゃんの彼氏知ってんの?」
虎太郎が言う。
「知ってるわよ」
「どんな人?」
「知ってどうするの?」
「は?」
「虎太郎じゃ、敵わないわよ!」
「そんなのわからないだろ?」

「━━━━━━━敵わないよ!!
俺と杏ちゃんは、愛し合ってるんだから!!」

「え……?
━━━━━━━雷十!!?」
いつの間にか、雷十が杏子達のテーブルの前に立っていた。

「杏ちゃん、俺との約束忘れてません?」
「え?」
「とにかく、帰りますよ。
オヤジや大悟も待ってます」
「うん…
笹美、昴くん、虎太郎くん。またね」
ゆっくり立ち上がり、雷十の元へ向かう。
するとグッと、手を掴まれ引き寄せられた。

「待って!杏子ちゃん!」
「え?虎太郎…く…?」
「また、会おうよ!みんなでさ!高校生活ももう少しだし!」
「うん。また━━━━んんっ!!」
今度は雷十に引き寄せられ、腕の中に閉じ込められた。
雷十の大きな身体に抱き締められ、顔が完全に埋まる、杏子。

「虎太郎、やめてね?
俺の女に…気安く触れるとか、自殺行為だよ?
あ!それとも、死にたいの?
だったら、一瞬で送ってあげるよ?
……………地獄になぁ!!!」
一瞬で闇に落ちたような、黒い雰囲気の雷十。
あまりにも、恐ろしい。
睨み付けられている虎太郎はもちろん、一緒にいる笹美や昴、店内にいる客達も震え上がる程だ。

「………ら…いと…苦し…」
もぞもぞと顔を出し、雷十を見上げる杏子。
「あ!ごめんなさい、杏ちゃん。
帰りましょ?」
今度は一瞬で、雰囲気が甘くなり微笑む雷十。

「ねぇ!みんなに、凄んでたんじゃないよね!?
私、顔が全部埋まってて、耳塞がってたから何言ってんのかわかんなかったけど」
「当たり前じゃないですかぁ!
今年も杏ちゃんと仲良くしてくださいね!って言ってたんですよ!」
笹美達に微笑み、杏子の腰を支え出入口へ促した雷十。

「みんな、ごめんね!また連絡するね!」
杏子が振り返り、小さく手を振った。
「うん!」
「お、おぅ…」
笹美と昴が微笑み手を振り返す。
虎太郎はただ、見つめていた。

「杏子ちゃんの彼氏、雷十さんだったの?」
杏子が出ていったドアを見て、虎太郎が呟いた。
< 5 / 63 >

この作品をシェア

pagetop