若頭、今日もお嬢を溺愛する
杏子「ちょっ…やだ!離して!」
身体を震わせる、杏子。

笹美「夏輝!!やめて!!」
敬介「夏輝!!」
愛生「やめなよ!!」
冬玄「雛には、手を出さないってルールだろ!!?」

敬介、愛生、冬玄が夏輝を杏子から引き剥がし、羽交い締めにする。

夏輝「離せ!!!
杏子、雷十が彼氏ってどうゆうこと?」

杏子「え?」
夏輝「杏子、彼氏はいないんじゃなかったの……?
俺には、恋人は作らないって言ってたじゃん……!」

ゆっくり、羽交い締めにされた腕を下ろした夏輝。
項垂れ、呟くように言った。

杏子「あの時は、雷十がまさか私のことを想ってくれてるなんて思わなかったから。
半年前から付き合ってるの」

夏輝「なんで……?
俺だって、ずっと杏子のこと想ってたのに……!」

何度も夏輝から告白を受けていた杏子。
でも雷十を想っていた杏子は告白を断り続け、一生雷十に片想いのままで居続けると心に誓っていたのだ。
(雷十と気持ちが通じ合えると思っていなかった為)

杏子「ごめんね、夏輝。
私は、最初から……雷十しか見えてない」

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その日の夜更け。
杏子は、雷十からの連絡を待ち続けていた。

【遅くなりますが、一目会って抱き締めさせてください】
の言葉を胸に━━━━━━━

しかし、雷十からのメッセージは…………
『杏ちゃん、ごめんなさい。まだ時間がかかります。
そっちに行くことができないかもしれません』

杏子は一人、旅館の庭に出ていた。

杏子「雷十のバカ!!
あんたが、一日一回会って触れないと死ぬっつったんじゃん!そんな嬉しいこと言われたら、期待するじゃん!」
胸が締め付けられ、目が潤み、涙が溢れる。

杏子「雷十…雷十…雷十、雷十、雷十……バカ…」



夏輝「杏子?」


杏子「え………夏輝?」
夏輝「なんで、泣いてんの?
…………って、雷オジ絡みなんだろうけど」
夏輝が隣に来て、涙を拭う。

杏子「何もない」
夏輝「そんなわけないだろ?」
杏子「夏輝には、すがらない」
夏輝「なんで?」
杏子「ここで、夏輝にすがるなんて最低じゃん!
そんな女になりたくない!」

夏輝「いいよ?俺にすがって?」
小柄な杏子に目線を合わせるように身体を折り、顔を覗き込む夏輝。

杏子「あんた、バカ?」
夏輝「うん、バカかも?杏子相手なら、いくらでもバカになるよ」
杏子「ごめん、やっぱ……ダメだよ…」

夏輝「なんで?」
杏子「私は、夏輝の気持ちに答えられない」
夏輝「うん。わかってるよ?」
杏子「なのに、すがるのはおかしい」
夏輝「だから、俺が!すがられたいの!」

杏子「だから私は!!雷十がいい!!
雷十に会いたい!!」

夏輝「杏子……
わかった!ちょっと、待って!」
そう言った夏輝。
スマホを取り出し、電話をかけだした。
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