若頭、今日もお嬢を溺愛する
杏子「雷十……?嘘…!?これは、夢?」

雷十「いいえ。夢じゃないですよ!
俺は、ここにいます!」

雷十が杏子の頬を撫でる。
杏子も手を伸ばして、雷十の頬に触れた。

この肌の感触、キラキラしてる瞳、形のいい口唇、サラサラした髪の毛、杏子の名前を呼ぶ低くて優しい声、匂い……………

雷十は、ここに、いる━━━━━━━

杏子「遅いよ、来んの!!」

雷十「ごめんなさい!」

杏子「もう少しで、夏輝に口唇奪われるとこだったじゃん!バカ!」

雷十「ごめんなさい!」

杏子「私に一日一回会って触れないと死ぬっつったの、雷十なんだから………そんな嬉しいこと言ったの雷十なんだから、急いで来いよ!!」

雷十「ごめんなさい!」

杏子「嘘……」

雷十「杏…ちゃん…?」

杏子「会いに来てくれて、ありがとう!
仕事、大丈夫なの?」

雷十「はい!大丈夫です!仕事、終わらせて来ました。
だから、こんな遅くなっちゃって……」

杏子は、雷十に抱きついた。
雷十が杏子の背中をゆっくり撫でる。

杏子「雷十」
雷十「はい」
杏子「好き」
雷十「俺は、愛してますよ」

杏子「好きなの!」

雷十「はい」
杏子「今、何時?」

雷十「………2時半回ったとこです」

杏子を抱き締めた状態で、腕時計を確認した雷十。
杏子の頭を撫でながら答えた。

杏子「三時間半」
雷十「え?」
杏子「笹美達とね、朝6時に起きて朝風呂入ろって約束してるの。
だから三時間半、私を自由にできるよ?
雷十、どうしたい?」

杏子は雷十を見上げ言った。

雷十「そんなの、決まってます。
…………………俺に拐われてください」

フッと笑った雷十は、杏子を抱き上げたのだった。



夏輝「ほんっと、雷オジには敵わねぇ…!
ほんとに、来るんだもんなぁー(笑)」
雷十の後ろ姿を見ながら、夏輝が呟いた。

杏子を抱き締めていた時、目の端で雷十が向かって来ているのを確認した、夏輝。

だから、わざとにキスしたいと言ったのだ。

でも口唇が重なる直前に、雷十が来て代わったのだ。


【夏輝、もし……もしも、俺が死んだら……
杏ちゃんをお前に頼みたい。
お前なら………“全てをかけて”杏ちゃんを愛せるだろ?】

昔、雷十に言われた言葉だ。

【でも、まぁ……そんな簡単に、俺は杏ちゃんを置いて死なないがな(笑)】

夏輝「ほんっと、敵わねぇ…!」
夏輝はフッと、微笑み部屋に戻ったのだった。

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