若頭、今日もお嬢を溺愛する
大悟「確かに、杏は亜子にそっくりだ。
今なんて、本当に亜子がここにいるみたいに………
でも、雷十は“杏子”を愛してくれている。
それは、ずっと近くにいた俺が一番よくわかってる」

夏輝「俺は!雷オジに言ってんだよ!!?」


雷十は、答えられなかった。
少なくとも、杏子を意識するきっかけは“亜子”だから。

ずっとある意味親子のように傍にいた、雷十。

日に日に亜子に似ていく、杏子。

亜子に恋をしていた気持ちが、ぶり返して来る感覚だった。


夏輝「……………ほら、答えられないじゃん!
雷オジは、誰を見てるの?
杏子?亜子ちゃん?」

雷十「………」

夏輝「俺にちょうだいよ!俺なら……真っ直ぐ杏子だけを愛すことできる」

杏子「夏輝、やめて」

杏子がゆっくり、目を開けた。

雷十「杏ちゃん?」
杏子「知ってたよ。雷十がママのこと見てること。
でもいいの。ママの代わりでも、私は雷十の傍にいたいから」
雷十「杏ちゃん、俺は━━━━━━」

笹美「雷十さん」

雷十「え?」
笹美「杏子、ずっと悩んでたんですよ?
私は最初、杏子は夏輝の彼女かと思ってて、聞いてみたら他に好きな人がいるって。
その人はママの事が好きだから、私は一生片想いのまま生きていくって。
それが半年前……付き合うことになったって言ってきて……でも、とても悲しそうでした。
私はわからなかった。
好きな人と恋人同士になれて、なんで悲しそうなのかなって……
杏子、言ってました。
苦しいけど、雷十と離れる方が辛いって!」


雷十「杏ちゃんは、何もわかってない」


そう言った雷十。
次で止まった駅で、杏子の手を引っ張り電車を降りた。

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杏子「どこ行くの?」
雷十「………」
杏子「ねぇ、雷十!」

何度も雷十に声をかける、杏子。
しかし雷十は、言葉を発することなく手を引き続けていた。

そしてそのまま、ホテルに入った。

ベッドの端に腰かけた雷十は、杏子を膝の上に座らせた。
雷十「杏ちゃん」
杏子「ん?」
雷十「今から話すことは、真実です」
杏子「うん」


雷十「聞いてくれますか?」



杏子「……………うん」

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