不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
* * * *

 入社してから一ヶ月、少しずつ仕事も覚えてきた。

 波斗に偶然会えることを期待していたのに、現実はそう上手くいかない。何しろ研究室には一般と違うエレベーターで移動しないと辿り着けないのである。

 いつになったら会えるのかなぁ。

 そんなことを考えながら会社の外に出た時だった。

「紗世ちゃん!」

 懐かしい声に呼び止められた。声のした方を振り返ると、あの頃と変わらない優しい顔がこちらを見ていた。

「波斗先輩!」

 リクルートではないスーツ姿にドキッとした。

 紗世は波斗に駆け寄ると、嬉しくてついはしゃいでしまう。

「やっと会えた〜。なかなか会えないから、もしかしたらここにいないのかもって思ってた」

 波斗も嬉しそうに紗世の頭を撫でる。この人、きっと何も考えずにこういうことをしちゃうのよね。どれだけの女子をキュン死にさせてきたのかしら。

「紗世ちゃん研究室なんでしょ? 場所が違うとなかなか会えないよね。だから待ち伏せしてみた!」
「えっ、お待たせしちゃった?」
「そんなに待ってないから大丈夫。紗世ちゃん、今日はこれから予定ある? なければ一緒にご飯でもどう?」
「もちろん、喜んで!」

 波斗の屈託のない笑顔はあの頃のまま。紗世はそれが嬉しかった。


 
 
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