不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
* * * *
居酒屋に着き名前を告げると、個室に案内される。
「おっ、やっと来たか! 久しぶりだな〜!」
健が相変わらず大きな声で波斗の到着を歓迎した。中では大和、樹の三人が待っていた。
「先輩、遅かったじゃないですか」
「ごめんごめん。いきなりの呼び出しだから、これでも頑張って仕事終わらせてきたんだけどな〜」
「あっ、勝手に生ビール頼んじゃったけどいいですか?」
「うん、ありがとう」
この四人は大学のサークルの中でも仲の良かったメンバーだ。大和と樹は一学年下だが、人懐っこい性格で健は特に気に入っていた。
空いている席が健の隣しかなかったので、波斗は諦めてそこに座った。面と向かうよりはまだいいのかもしれない。
「そういえば先輩、紗世ちゃんとは会えました?」
大和がニヤニヤしながら波斗の顔色を伺う。
「えっ、なんで紗世ちゃん?」
「千鶴に聞いたんだけど、紗世ちゃんA&B食品に就職したって。案外先輩のこと追いかけてたりして?」
「うーん……残念ながら。紗世ちゃんはカレーの研究がしたかったらしいよ。よく一緒にご飯は食べるけどね」
「あぁ! そういえば紗世ちゃんってカレーオタクだった!」
波斗は苦笑いをする。紗世ちゃんが聞いたら怒るだろうな。
まわりには紗世とのことは話していないので、ただの仲の良い先輩後輩という印象しかないだろう。
「大和君もかなりラブラブだと噂を聞いたよ〜」
「なっ……!」
「そうなんですよ、最近千鶴ちゃんに構い過ぎて、俺が誘っても全然遊んでくれないし」
「樹! 余計なこと言うなよ!」
不思議だな。なかなか会えなくても、こうして集まるとあの頃に戻れる。
「で? 今日このメンバーを呼び出したってことは?」
樹が健に詰め寄ると、健は急におしぼりをマイクに見立てて立ち上がる。
あぁ、嫌な予感しかしない。
「えーっ、本日は皆さま、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます! 私ごとではありますが、このたび結婚することになりました!」
盛り上がる大和と樹に対し、波斗は笑顔を浮かべながら、締めつけられる胸を押さえた。
「やっぱりか〜! なんかそんな気がしてだんだよな」
「でも先輩って二十六でしょ? 早くない?」
「彼女が三十までに結婚したいっていうからさ。あっ、彼女俺より三才年上ね。まぁ俺もいつかはするつもりだったし、だったら今がタイミングいいかなぁって思って」
「なるほど」
「年上の彼女ってどうですか? 甘えさせてくれたりする?」
「まぁどっちもかな。甘えるし、甘えさせたいし」
「のろけかよ……」
波斗はみんなの会話を黙って聞いていた。本当のことを言えば、耳を塞いで何も聞きたくない。
好きな人の恋人なんて知りたくない。ノロケなんてどうでもいい。
あぁ、息が苦しい。笑顔でいるだけ精一杯だった。
居酒屋に着き名前を告げると、個室に案内される。
「おっ、やっと来たか! 久しぶりだな〜!」
健が相変わらず大きな声で波斗の到着を歓迎した。中では大和、樹の三人が待っていた。
「先輩、遅かったじゃないですか」
「ごめんごめん。いきなりの呼び出しだから、これでも頑張って仕事終わらせてきたんだけどな〜」
「あっ、勝手に生ビール頼んじゃったけどいいですか?」
「うん、ありがとう」
この四人は大学のサークルの中でも仲の良かったメンバーだ。大和と樹は一学年下だが、人懐っこい性格で健は特に気に入っていた。
空いている席が健の隣しかなかったので、波斗は諦めてそこに座った。面と向かうよりはまだいいのかもしれない。
「そういえば先輩、紗世ちゃんとは会えました?」
大和がニヤニヤしながら波斗の顔色を伺う。
「えっ、なんで紗世ちゃん?」
「千鶴に聞いたんだけど、紗世ちゃんA&B食品に就職したって。案外先輩のこと追いかけてたりして?」
「うーん……残念ながら。紗世ちゃんはカレーの研究がしたかったらしいよ。よく一緒にご飯は食べるけどね」
「あぁ! そういえば紗世ちゃんってカレーオタクだった!」
波斗は苦笑いをする。紗世ちゃんが聞いたら怒るだろうな。
まわりには紗世とのことは話していないので、ただの仲の良い先輩後輩という印象しかないだろう。
「大和君もかなりラブラブだと噂を聞いたよ〜」
「なっ……!」
「そうなんですよ、最近千鶴ちゃんに構い過ぎて、俺が誘っても全然遊んでくれないし」
「樹! 余計なこと言うなよ!」
不思議だな。なかなか会えなくても、こうして集まるとあの頃に戻れる。
「で? 今日このメンバーを呼び出したってことは?」
樹が健に詰め寄ると、健は急におしぼりをマイクに見立てて立ち上がる。
あぁ、嫌な予感しかしない。
「えーっ、本日は皆さま、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます! 私ごとではありますが、このたび結婚することになりました!」
盛り上がる大和と樹に対し、波斗は笑顔を浮かべながら、締めつけられる胸を押さえた。
「やっぱりか〜! なんかそんな気がしてだんだよな」
「でも先輩って二十六でしょ? 早くない?」
「彼女が三十までに結婚したいっていうからさ。あっ、彼女俺より三才年上ね。まぁ俺もいつかはするつもりだったし、だったら今がタイミングいいかなぁって思って」
「なるほど」
「年上の彼女ってどうですか? 甘えさせてくれたりする?」
「まぁどっちもかな。甘えるし、甘えさせたいし」
「のろけかよ……」
波斗はみんなの会話を黙って聞いていた。本当のことを言えば、耳を塞いで何も聞きたくない。
好きな人の恋人なんて知りたくない。ノロケなんてどうでもいい。
あぁ、息が苦しい。笑顔でいるだけ精一杯だった。