不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
* * * *

 何があったのかな……。よくわからないまま、とりあえず紗世にかわいいと言っただけ。でもそれだけで安心したように見えた。

 営業部に戻ると、関根が気付いて近寄ってくる。

「どうかしたんですか?」
「えっと……ちょっと……取引先からの連絡があってね! 大丈夫だったよ」

 関根には紗世の姿は見えていなかったようなので、あえて言わなかった。

「そういえば今聞いたんですけど、企画部の弦巻さん、今度は目黒さんに声かけたみたいですよ」
「えっ……」
「さっき会議の後に、会議室に二人きりで話してたって。でも目黒さんがめちゃくちゃ不機嫌そうにしてたらしいので、上手くは行かなかったみたいですけど」
「そうなんだ……」

 企画部の弦巻といえば、女癖が悪くて有名だった。ただ仕事が出来て見た目も良いので、優しくされると自分だけと思ってしまう女性も多かった。

 さっきのは弦巻さんが原因だったのか。何かされたりしてないだろうか。急に心配になってきた。

 でも紗世ちゃん、仕事中に連絡することを嫌がるしな……。

「気になります? 上野さんお気に入りの後輩ですもんね〜」

 関根は波斗の顔色を伺うように話す。

「そうなんだよね。何もないといいんだけど……」

 否定しなかったことに関根は驚いていたが、波斗は紗世が気になって仕方がない。

 とりあえず元気になってくれたし、帰ったら聞いてみよう。
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