不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
紗世が立ち上がり、波斗は紗世を気にしつつもインターホンに出る。
「はい」
「俺、健」
二人は驚いて固まる。
「ちょ、ちょっと待って」
波斗がドアを開けるため玄関に向かうと、紗世は会社用のカバンを手に持った。
「よっ!」
ドアが開き、健が顔を出したタイミングで、紗世はその横をすり抜け外に出る。
「えっ、紗世ちゃん?」
紗世は健ににっこり笑うと、
「ごゆっくり」
と言って走り去る。
「紗世ちゃん!」
波斗が慌てて外に出るが、健の乗ってきたエレベーターであっという間にいなくなってしまった。
「あれっ、俺もしかしてタイミング悪かった?」
「健ごめん! 今日は帰って!」
波斗はドアを開けたまま紗世を追いかける。残された健はその場に立ち尽くす。
「ケンカか?」
開いたままのドアと、カレーの匂いを嗅ぎ、頭をぽりぽり掻く。
「仕方ねーなー。不用心だしな。待っててやるか」
健は部屋に入るとソファに座り、持ってきたレモンサワーの缶を開けた。