不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜

 紗世が立ち上がり、波斗は紗世を気にしつつもインターホンに出る。

「はい」
「俺、健」

 二人は驚いて固まる。

「ちょ、ちょっと待って」

 波斗がドアを開けるため玄関に向かうと、紗世は会社用のカバンを手に持った。

「よっ!」

 ドアが開き、健が顔を出したタイミングで、紗世はその横をすり抜け外に出る。

「えっ、紗世ちゃん?」

 紗世は健ににっこり笑うと、
「ごゆっくり」
と言って走り去る。

「紗世ちゃん!」

 波斗が慌てて外に出るが、健の乗ってきたエレベーターであっという間にいなくなってしまった。

「あれっ、俺もしかしてタイミング悪かった?」
「健ごめん! 今日は帰って!」

 波斗はドアを開けたまま紗世を追いかける。残された健はその場に立ち尽くす。

「ケンカか?」

 開いたままのドアと、カレーの匂いを嗅ぎ、頭をぽりぽり掻く。

「仕方ねーなー。不用心だしな。待っててやるか」

 健は部屋に入るとソファに座り、持ってきたレモンサワーの缶を開けた。
< 45 / 50 >

この作品をシェア

pagetop