不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
* * * *
「待って! 紗世ちゃん!」
さすがにヒールの靴では走りづらく、すぐに波斗に捕まってしまった。
「離して」
掴まれた手を振り払う元気も本当は残っていない。
「離さない」
「健先輩のところに行けばいいじゃない。私の役目はもうおしまい。出て行く」
「嫌だ。そんなのダメだ」
「どうせ体だけ。先輩後輩以上になれないなら、ここにいる意味なんかない」
「違うんだ……お願いだから聞いてよ」
波斗の悲しそうな顔をみて胸が締め付けられる。私だって辛いのに、先輩にこんな顔をさせたくなかった。
どれだけ先輩に弱いの、私……。
「疲れたから座りたい」
波斗は紗世を抱き上げると、マンション前の生垣のブロック塀に座らせる。こんな風に言い放つのに、腕はしっかり波斗の首に回される。だから君が愛おしいんだ……。
「五分以内にまとめて」
隣に腰を下ろした波斗の顔を見ようともせずにそう言い放つ。
「五分もいらない。俺は健よりも紗世ちゃんが大切で、好きだって伝えたいだけだから」
思いがけない言葉に動けなくなる紗世を、波斗は強く抱きしめる。
「気付くのに時間がかかっちゃったんだ。本当はとっくに……たぶん初めてセックスした日から心は傾き出していた。だけど健を好きでいる自分にこだわっていて、そんな簡単に心変わりなんてするはずがないと思ってた」
波斗の腕の中で、紗世は静かに聞いている。
「紗世ちゃんへの気持ちを認められなかったのは、俺のそういう強情な性格が邪魔をしてたんだ。本当は紗世ちゃんをずっと愛してた。君の優しさに甘えてたんだ。ごめんね」
「……本当に? 嘘じゃない?」
「俺、一応愛想は良くしてるけど、好きじゃない人に好きって言えるような器用な人間じゃないよ」
「信じていいの……?」
「本当は今日伝えようとしたんだ。紗世ちゃんへの想いをはっきり確信したから、もう揺るがないよ。紗世ちゃん、俺の彼女になってくれますか?」
波斗の胸に顔を埋めたまま、紗世は何度も首を縦に振った。
「待って! 紗世ちゃん!」
さすがにヒールの靴では走りづらく、すぐに波斗に捕まってしまった。
「離して」
掴まれた手を振り払う元気も本当は残っていない。
「離さない」
「健先輩のところに行けばいいじゃない。私の役目はもうおしまい。出て行く」
「嫌だ。そんなのダメだ」
「どうせ体だけ。先輩後輩以上になれないなら、ここにいる意味なんかない」
「違うんだ……お願いだから聞いてよ」
波斗の悲しそうな顔をみて胸が締め付けられる。私だって辛いのに、先輩にこんな顔をさせたくなかった。
どれだけ先輩に弱いの、私……。
「疲れたから座りたい」
波斗は紗世を抱き上げると、マンション前の生垣のブロック塀に座らせる。こんな風に言い放つのに、腕はしっかり波斗の首に回される。だから君が愛おしいんだ……。
「五分以内にまとめて」
隣に腰を下ろした波斗の顔を見ようともせずにそう言い放つ。
「五分もいらない。俺は健よりも紗世ちゃんが大切で、好きだって伝えたいだけだから」
思いがけない言葉に動けなくなる紗世を、波斗は強く抱きしめる。
「気付くのに時間がかかっちゃったんだ。本当はとっくに……たぶん初めてセックスした日から心は傾き出していた。だけど健を好きでいる自分にこだわっていて、そんな簡単に心変わりなんてするはずがないと思ってた」
波斗の腕の中で、紗世は静かに聞いている。
「紗世ちゃんへの気持ちを認められなかったのは、俺のそういう強情な性格が邪魔をしてたんだ。本当は紗世ちゃんをずっと愛してた。君の優しさに甘えてたんだ。ごめんね」
「……本当に? 嘘じゃない?」
「俺、一応愛想は良くしてるけど、好きじゃない人に好きって言えるような器用な人間じゃないよ」
「信じていいの……?」
「本当は今日伝えようとしたんだ。紗世ちゃんへの想いをはっきり確信したから、もう揺るがないよ。紗世ちゃん、俺の彼女になってくれますか?」
波斗の胸に顔を埋めたまま、紗世は何度も首を縦に振った。