不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
その時、トイレのドアをノックされる、紗世は動揺を隠せなかった。
「紗世ちゃん? 大丈夫? トイレから出てこないから心配になってさ。具合悪いの?」
「違うの。なんでもないから、向こうに行ってて」
「なんでもないなら、なんで出てこないの? カギ開けるよ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
紗世は検査薬を手に持ったまま慌てて飛び出す。それを見て波斗がハッとする。
「それって……」
紗世は言葉に詰まった。
「もうずっと生理が来てなくて……でもまだ怖くて見てない……」
「……なんで怖いの?」
「……波君の反応がわからないから……困らせたらどうしようって思って……」
波斗は紗世の手を引いてソファに座らせる。波斗も隣に腰を下ろし、そっと肩を抱いた。
「紗世ちゃんさ、もっと早くに相談してよ。そうしたら今日をもっとワクワクした気持ちで迎えられたかもしれないよ?」
それを聞いて紗世は体の力が抜けていく。
「困ったりしない?」
「なんで? まさか紗世ちゃんは嫌なの⁈」
「ううん、嫌じゃない」
「じゃあさ、二人で確認しよう。3・2・1で開けるよ。いい?」
波斗の言葉に促されて、紗世は先ほどとは全く違う気持ちで検査薬を握る。
「あっ、ちょっと待って! どうなってたら陽性なの?」
「こっちの窓に線が出てたら陽性だって」
「よし、じゃあいくよ! 3・2・1……!」
紗世がゆっくり指を外すと、窓には線が一本はっきりと出ていた。