不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
やっぱり妊娠してたんだ……。そう思った瞬間に、目の前の波斗が泣き出した。
「な、波君⁈」
「紗世ちゃん……ありがとう……!」
「えっ……」
そして紗世をそっと抱きしめる。
「すごくない? 俺、お父さんになるんだよ……。なんか突然過ぎてまだ実感湧かないけど、紗世ちゃんのお腹に俺との赤ちゃんがいるなんて、なんかすごいよ……。命ってこうやって繋がるんだね」
波斗が紗世のお腹を愛おしそうに撫でたので、不安しか感じていなかった紗世は嬉しさのあまり、両手で顔を覆って上を向く。
「もう波君の言葉で幸せいっぱいだよ〜」
波斗は紗世の両手を顔から離し、ぎゅっと握る。
「紗世ちゃんのこと、絶対に幸せにするよ。みんなで楽しい家族になろう」
「うん、ありがとう……」
私は何を心配してたんだろう。これが波君じゃない。
「あっ、そうだ! ちょっと待ってて!」
波斗は紗世のそばを離れると、クローゼットの中を何やらゴソゴソさせてから戻ってくる。
にっこり微笑み、紗世の前に跪くと小さな子箱を取り出す。
「本当は来週の紗世ちゃんの誕生日に渡すつもりだったんだ。ちょっと早くなっちゃったけど……」
思いがけない事態に、紗世の目からは涙が溢れてくる。
「紗世ちゃん、僕と結婚してください」
「はい、喜んで……」
二人は抱き合いキスをする。
すると波斗はホッとしたように笑った。
「いろいろ計画立ててたんだけど、今こうして渡せて良かった〜! はっ、でもこれから忙しくなるね!」
「……何が?」
「まずはご両親への挨拶でしょ、婚姻届に、結婚式! 赤ちゃんが産まれるなら、ちょっと広い新居も探したほうがいいかな….」
波君たら、すごく嬉しそう。いつまで経ってもかわいいんだから。
「ゆっくり進めていこう? ねっ、旦那様」
「うん……そうだね、奥様」
まだまだ続いていく未来。あなたとなら笑顔で歩いていける気がするの……。