不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
その顔を見て、紗世は波斗の頬を両手で挟む。
「……先輩って意外と強情なのね。でもいいわ。こうして秘密を共有したわけだし、私がいつでも先輩の話を聞いてあげる。辛かったらいつでも言ってね」
紗世が言うと、波斗は急に笑い出す。
「なんて頼りになる後輩なのかな、君は」
その時どこか遠くの方で花火の音が聞こえ、紗世はびっくりして波斗の胸に顔を埋めた。
「なんだ花火……」
顔を上げると、波斗が紗世を見つめていた。その視線に絡め取られ、紗世は動けなくなる。
きっと失恋のせいでおかしくなっているんだ……。
少しずつ二人の顔が近付き、唇が触れる。一度離れるが、どちらからともなくもう一度キスをする。ゆっくりと唇が動き、舌が絡まる。
お互いの中へ侵入してる……いやらしいけど、こんなにも気持ちが良い。
しかし正気に戻った波斗が、慌てて紗世の体を離す。
「ご、ごめん! 俺……なんてこと……」
波斗先輩が、優しくて天然だってことはみんな知ってる。私もかわいい先輩だって思ってた。でも今私の目の前にいるのは、それだけじゃない、秘密を持った影のある男性だった。
紗世は波斗の手に自分の手を重ね、ゆっくり指を絡めていく。
「先輩……先輩が嫌じゃないなら続けて……」
波斗先輩の顔が驚きで固まる。こんな顔、きっと私しか知らない。
「なんでかな……私は嫌じゃないの……。自棄になっているのかもしれない。慰めだっていい。むしろもっとしたい……んっ……」
再び波斗にキスをされて、紗世はそっと目を閉じると、腕を彼の首に回す。
次第に波斗の手が紗世の腰のあたりを不器用に動く。
「俺……男だよ?」
「言ったでしょ。私は千鶴ちゃんが好きだったって。前は学年一の秀才に恋してた時期もあるんだから」
そう言ってから紗世もハッとする。
「逆に先輩は女の子じゃ無理?」
波斗は苦笑いをする。
「わからない。俺は中学から男子校だから、そういうの疎いんだよね」
ただそう言いながらも、二人とも呼吸が荒くなっていく。紗世のうっとりした顔を見て、波斗は素直にかわいいと思った。