不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
「紗世ちゃん……かわいい……」
自然と口に出た言葉に、波斗本人が一番驚いた。
紗世自身は恥ずかしくて顔を赤くする。なんて魔法みたいな言葉。かわいいのは先輩だわと思いながらも、紗世は心が溶けていくような感覚に陥る。
「先輩……私初めてだけど、この続きがしたいって言ったら……引く? やっぱり健先輩じゃないと欲情しない?」
波斗は苦しそうに紗世にキスを繰り返した。
「俺だって……初めてだから上手く出来ないと思うんだ……紗世ちゃんを傷つけちゃうかもしれないよ……」
痛みと熱に浮かされて、二人とも少しおかしくなっているのかもしれない。
「それでもいいの……私のこと、健先輩の代わりにしてもいい。このままやめたくない……」
私はどうなの? 千鶴ちゃんの代わりに波斗先輩と体を重ねるの?
波斗の熱っぽい瞳を見ていると、千鶴へのものとは違う感情が湧き上がる。
この人を慰めたいし、この人に私の傷を舐めてもらいたい。
だから私は大丈夫。千鶴ちゃんの身代わりとして波斗先輩が欲しいわけじゃない。波斗先輩が欲しい。
波斗は紗世を引き剥がすと、真剣な眼差しで紗世を見つめた。
「……紗世ちゃん、俺の部屋に来る? たまたまなんだけど、シングルにしてもらったから誰も来ないよ……」
俺は一体何を言ってるんだろう。湧き上がる欲望は抑えが効かなかった。
「いいの?」
「こんなところじゃ嫌でしょ? それに……」
波斗は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに俯く。
「部屋になら……ゴムがあるから……」
「……なんであるの?」
紗世は吹き出した。
「い、いっぱいじゃないからね! 男ならちゃんと持ってろって健に言われて、財布に何枚か入れられたのがあるだけだから……」
千鶴ちゃんしか見えてなかったから気付かなかったけど、こんなに魅力的な人がすぐそばにいたんだ。
二人は立ち上がると、熱が冷めないうちに、ホテルまで早足で歩き出した。