天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
『富永さんから番号を聞いた』と里帆に連絡をすると、彼女は『富永さんが……』と諦めたように苦笑いした。

『連絡をくれるのはかまいませんが、不規則な勤務で忙しいので返事は期待しないでください』

 そう冷たく言われ、それから無視されるのを覚悟の上でメッセージを送ると、時間が空くけれど里帆は必ず返事をしてくれた。

 短めの文章に、崩れない敬語。
 一生懸命素っ気なく返事をしようとしているのが伝わってきた。
 頑なだけどお人好しな彼女が、どうしようもなくかわいかった。

「連絡手段もないのに勝手に待ってるなんて。今日は遅番だったからよかったですけど、もし私が夜勤だったらどうするつもりだったんですか?」

 顔をしかめて怒る里帆に、にっこりと笑いかける。

「そうしたら、里帆を待ちながら閉店まで飲んでひとりでさびしく帰るだけだよ」
「閉店まで待つなんて……。申し訳ない気持ちになるのでやめてください」
「俺が勝手にしてることなんだから里帆が気にすることじゃないし、本当に嫌なら無視すればいい」

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