天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 そう言って流し目を向けると、里帆が口をつぐんだ。

 お人好しな里帆は強引な誘いを無視できない。
 その優しさに付け込んで、俺はこうやって彼女と会うようになっていた。

「翔さんは、今日はどこの便だったんですか?」
「ニューヨークだ」

 彼女の質問に答えると、「ニューヨーク!?」と目を丸くする。

「十何時間も乗務した上に時差もあるんですから、こんな場所で飲んでないで帰って休んだ方がいいですよ」
「大人しく家に帰ってひとりでさみしく寝るより、里帆の顔を見ている方が癒される」

 カウンターに頬杖をつき里帆の頬をなでながら言うと、彼女は顔をしかめた。

「私なんか見たって癒されないと思いますけど」
「愛しい人と一緒にいられるだけで、癒されるよ」
「もう、何言ってるんですか……っ」

 里帆はしばらく黙り込んだ後、両手で顔を覆いうつむく。
 表情は見えないけれど、髪の間からのぞいたうなじは真っ赤になっていた。

 どうやらものすごく照れているようだ。

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