天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 とがった唇も、膨らんだ頬も、かわいくて仕方ない。

「あのときの里帆は、気持ちよすぎて泣いてたもんな。ぐずぐずになって俺の肩にすがりついておねだりする里帆は本当にかわいかった」
「パリでのことを蒸し返すのは反則です」
「どうして?」
「だって、あのときは翔さんがパイロットだって知らなかったから……」

 彼女はそう言って口をつぐむ。

 もし違う仕事をしていたら、彼女はすんなり俺の愛を受け入れてくれたんだろうか。

「里帆は、本当にパイロットが嫌いなんだな」
「嫌いというわけじゃないです。ただ、もう二度と付き合いたくないだけです」

 里帆はうつむきながらつぶやく。

 そうやってむきになるほど、元カレのことが忘れられないのか。
 そう思うと、嫉妬で胸の奥が焼け付くように痛んだ。







 空港の中にあるオフィスのブリーフィングルームで、副機長とともに今日のフライトの打ち合わせをする。

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