天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない～痺れるくらいに愛を刻んで～

　その名前に足を止め、芦沢を見た。

「あの子の管制指示、いいですよね。冷静で的確で安心感がある。前から綺麗な声の管制官がいるなと思っていたけど、あんなにかわいい子だとは思わなかったなぁ」

　里帆を褒める芦沢の言葉を聞いているうちに、どんどん機嫌が悪くなる。

「パイロットたちの間でも彼女の声のファンは多いから、実際に会ったらみんな惚れそうですよね」

　思い切り眉をひそめる。

　そんな俺を見た芦沢は、「そうやって嫉妬むき出しの顔をしないでくださいよ」と噴き出した。

「矢崎さん、やっぱり蒼井さんのことが好きなんだ」
「どうして」
「搭乗訓練であの子を見るときだけ視線が甘かったから、すぐにわかりましたよ。いつから付き合ってるんですか？」
「好きだとは伝えているが、付き合ってない」

　俺の答えを聞いて、芦沢が信じられないという表情をする。

「え。矢崎さんに迫られてもうなずかないなんてすごいですね。なにか訳あり？」
「元カレのことを引きずってるらしい」