天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない～痺れるくらいに愛を刻んで～

「へぇ……。その元カレと付き合っているときに、よっぽどいやな思いをしたのかな」

　その言葉を聞きながら静かに息を吐きだす。

　里帆に『絶対にパイロットとは付き合いたくない』と言わせるなんて、いったいどんな男だったんだろう。

　想像するだけで、嫉妬で胸の辺りが焼け付く。

　そんな話をしていると、ＣＡたちが集まりなにやら騒いでいるのに気づいた。
　中心にいるのは、安本れいなという二十五歳のＣＡだった。

「え、安本さん結婚するの？」という驚きの声に、安本が得意げな顔でうなずく。
「そうなんですー。結婚式にはぜひ来てくださいね」
「彼氏って、整備部の？」
「やだぁ。私が整備士なんかと結婚するわけないじゃないですか」

　安本の言葉に周りの空気が一瞬ぴりつく。

「整備士なんかって……。じゃあ相手は誰？」

　彼女はギスギスした雰囲気の中、満面の笑みで答えた。

「パイロットの志田さんです」
「え、志田さん!?　ちょっと前まで整備士と付き合ってたのに、いつの間に？」