天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「どうせ『ここをアジアのハブ空港にしたいから、もっと発着数を増やせ』とか、無茶なこと言ってくるに決まってますよ」
「発着数を増やせって言う前に、滑走路を増やしてほしいよな」
「だめですよ。滑走路が増えたら今以上に飛行経路が複雑になるし、圧倒的に人員がたりない」
「それなら人員を増やす前に俺たちの休みと給料を増やしてほしい」

 口々に文句を言う同僚たちの声を聞きながら、私は苦笑いする。

 管制官の背負う重責を考えると、愚痴りたくなる気持ちもわかる。

 ひとつのミスが大きな事故につながる航空管制は、世界で一番ストレスのかかる仕事だとも言われている。
常に精神面に大きな負担がかかり、不調をきたす職員も少なくないからだ。

 実際その重圧に耐えきれず、退職した同僚もいる。

 その実情を知らない人に簡単にあれこれ指示をされると、たしかに愚痴りたくもなる。

「言いたいことは非常によくわかる」

 みんなからの苦情を聞いていた武地主幹が険しい表情でうなずく。

< 156 / 238 >

この作品をシェア

pagetop