天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 みんなそれぞれに目的を持って飛行機に乗るんだなぁ。と当たり前のことを思う。

 その飛行機が予定通り運航するために、どれだけ多くの人が関わっているのか知っている人は少ないかもしれない。

 でも、それでいいんだと思う。
 飛行機を安全に飛び立たせ目的地までたどり着かせるために、私たちは働いているんだから。

 なんの不安もなく飛行機に乗り込む人たちを見ると、頑張らなきゃという気持ちになった。

 翔さんとは、あの日以来会っていなかった。
 もう、一ヶ月以上になる。

 相変わらず彼は連絡をくれるけれど、強引に私を誘うことはなくなった。

 ちゃんと私の気持ちを尊重し、断る選択肢を用意してくれる。
 その優しさが嬉しいのに切なかった。

 前みたいに私が断る隙も無く、強引に誘ってくれたらいいのに。
 そうしたら、仕方ないって顔をして、あなたに会いに行けるのに。

 そんなことを考えてしまう私は、本当に卑怯者だと思う。

 自己嫌悪に陥りかけて、ため息を吐き出し気持ちを切り替える。

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