天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~


 その後、私が管制室に戻ると、待ち構えていた武地主幹が「疲れただろうから、今日はもう帰っていいぞ」と言ってくれた。

「え、いいんですか……?」
「明日も休みだし、ゆっくりしてこい」

 ねぎらいの言葉をかけられ、いくらなんでも優しすぎるのではと不思議に思い首をかしげる。

 そして、みんなから生暖かい視線で見られていることに気づいてはっとした。

 空港の中に立つ管制塔は三百六十度ガラス張りで、全滑走路を見下ろせるようになっている。

 しかも、滑走路に異物が落ちていないかや、不審人物が侵入していないかを確認するために、双眼鏡も用意されている。

 ということは……。

 嫌な予感に表情が強張っていく。そんな私を富永さんが満面の笑みで見ていた。

「蒼井さん。結婚式には呼んでくださいね」
「いや、なんで翔さんにプロポーズされたことを知ってるの!?」

 思わず悲鳴を上げてしまった。

 姿は見えていたとしても、声が聞こえるはずはないのに。

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