天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
「お前はもう大丈夫だ。なんの不安も持つ必要はない。胸を張っていい」

 力強く言われ、胸に熱いものが込み上げてきた。

 主幹はきっと、私が尚久と別れてからずっと不安を抱えてきたことを感じ取っていたんだろう。

 認めてもらえたのが嬉しくて、「はい」とうなずき目元を拭った。






 管制塔を出た後、私は通勤に使っている電車のホームではなく、出発ロビーに向かった。
 ベンチに座り、行き交う人をぼんやりと眺める。

 天候も回復し、ターミナルビルの中はいつもどおりの賑わいだった。

 さっきまでの緊張状態が、なんだか嘘みたいだ。
 夢を見ていたような気分になる。

 そうだ、と思いスマホでニュースを検索すると、『OJA機がエンジントラブルで緊急着陸。ケガ人はゼロ』という見出しを見つけた。

 それを読んでほっと息を吐き出す。

 よかった。
 乗客も乗員も、誰ひとりケガをしなかったんだ。

 記事の中には乗客のコメントもあった。

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