天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 そわそわして落ち着かなくて、少し不安で。
 翔さんもこんな気持ちだったんだろうか。

 そんなことを考えていると、天井の照明がなにかに遮られ手元に影が落ちた。

 驚いて顔を上げる。そこにはこちらを見下ろす整った顔があった。

「里帆が俺のことを待っていてくれるのは嬉しいけど、場所くらい書いてくれ」

 苦笑しながらそう言われ、目を見開く。

 私の座るベンチの後ろには翔さんが立っていて、こちらを見下ろしていた。

「翔さん!」
「ま、里帆のいるところはすぐにわかるけどな」

 驚いて振り返る。
 彼はもう制服ではなく、私服に着替えていた。

「業務は終わったんですか?」
「あぁ。とりあえず今日は帰っていいってことになった。さすがにイギリスからのフライトの後だからな」
「そうですよね……」

 イギリスから日本へは十二時間以上にもなる長距離フライトだ。

 体力的にも精神的にも大変なのに、あのアクシデントが重なったんだ。
 翔さんの疲労は相当なものだろう。

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