天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 険しい顔をした里帆にそうたしなめられ、「わかったよ」と笑いながらうなずいた。

 普段はお人好しで優しいのに、真面目で人に流されない強さもある。そういうところが愛おしい。

 そう思っているとき、後ろから走ってきた人にぶつかられた里帆が「きゃ」と短い悲鳴を上げた。

 バランスを崩した里帆はそのまま倒れそうになる。

 俺は咄嗟に里帆の背中に手を回し体を支えた。
 まるで抱き合うような体勢になる。

「大丈夫か?」

 声をかけると、里帆がこちらを見上げた。
 微かに茶色がかった瞳が綺麗で、思わず見とれそうになる。

「あ、ありがとうございます」

 里帆は俺にお礼を言うと、後ろを振り返る。
 里帆にぶつかってきたのは、小学校低学年くらいの男の子だった。

「ごめんなさい、お姉さん!」

 少年はこちらを見上げ、慌てた様子で謝る。

 里帆は少年の前にしゃがみ、視線の高さを合わせて話しかけた。

「大丈夫だよ。でもここにはたくさんの人がいるから、走り回ると危ないからね」
「うん」

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