天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
白いやわらかそうな頬に、伏せられた長いまつげ。
水面を見つめる瞳はわずかに茶色がかっている。
赤い唇はため息がこぼれるのをこらえるように、きゅっと引き結ばれていた。
そんなさみしげな表情さえ透明感があって綺麗で、思わず見とれそうになる。
声をかけようかと口を開きかけ、寸前で思いとどまった。
落ち着け。
俺は彼女を知っているけれど、たぶん彼女は俺のことを知らない。
海外で突然声をかけたら、不審に思われるかもしれない。
せっかくのこの奇跡のような偶然を、無駄にしたくない。
そう思ったとき、後ろから走ってきた男が彼女にぶつかった。
「きゃ」と細い悲鳴が聞こえ、彼女の体がよろめくのが見えた。
その瞬間、俺は足を踏み出していた。