天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~


 翔さんはそう言いながら、私の体に触れる。それだけで気持ちよくて背筋が跳ねた。

 朝の光が差し込むベッドの上で、じゃれ合うように何度もキスをする。

 そのとき、遠くから鐘の音が聞こえた。
 その美しい音色に思わず動きを止めて聞き入る。

「時刻を知らせる教会の鐘の音だな」

 翔さんがそう教えてくれた。

 美しいパリの街に響く、荘厳な鐘の音。
 夢はここで終わり、目を覚ますときが来たと言われたような気がした。

「翔さん。私、帰ります」

 はっきりとした口調で言うと、翔さんが私をじっと見つめる。
 彼が私を引き留めたいと思っているのが伝わってきて、それだけで十分嬉しかった。

「わかった。じゃあ、日本に帰ったら連絡を……」

 言いかけた彼の口元に指で触れ、言葉を遮った。

「お互いになにも知らないままでお別れしましょう」

 私がそう言うと、翔さんの表情が曇る。

「里帆はもう俺に会う気はないのか?」
 
< 70 / 238 >

この作品をシェア

pagetop