スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「沙彩ちゃん、お見舞いに来たよ」

 翌日、私は長谷川くんと一緒に沙彩ちゃんのお見舞いへとやってきた。
 長谷川くんは昨日言った通り車で迎えにきてくれて、共に病院へと向かった。

 手土産のクッキーを渡し、喜ぶ沙彩ちゃんを見て私もつられて笑顔になる。

「紗雪お姉さん、来てくれてありがとう! すっごく嬉しい! お兄ちゃんから色々紗雪お姉さんのこと聞き出そうとしてたんだけど、全然話してくれなくて」

「そうなの、長谷川くん?」

「別に話すことなんてないし……」

 そう言って気まずげに目線を逸らす長谷川くん。そんな彼に対し、ムッと頬を膨らませている沙彩ちゃんが愛らしい。

「いっつもこうなの! なんかあるとすぐ『別に』とか『関係ない』とか……紗雪お姉さん、どう思う?」

「うーん、ちょっとそっけないよね。こんな可愛い妹さんがいるんだから、もっと可愛がってあげないと」

「そうだよね! 私、お兄ちゃんじゃなく紗雪お姉さんみたいな人が姉だったらよかった!」

 沙彩ちゃんがそんなことを言うと、背後に『ガーン』と効果音が出そうなほどに長谷川くんは肩を落とす。
 長谷川くんって意外とシスコンなんだなと思い、沙彩ちゃんと一緒にくすくす笑い合う。

 でもこんな可愛い妹がいるならそうなるのも必然かなと思った。

「そうだ! 沙彩ちゃんってもうすぐ誕生日なんだよね。だからさ……」

 私は昨日購入したプレゼントを紙袋から取り出し、沙彩ちゃんに渡した。
 もちろんこのプレゼントはパリ・オペラ座バレエ団時代の貯金を切り崩して購入したものだ。

 所属したときはバレエ用品などにお金をかけるだけでで、それ以外にあまりこだわりのなかった私。
 貯金はそこそこ溜まってはいたのだ。
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