スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「わああ! すごい嬉しいです! ありがとうございます! 開けてもいいですか?」

「もちろん!」

 律儀に開けてもいいかと尋ねる姿にに礼儀の良さを感じる。
 沙彩ちゃんは包装紙を取り除き、中の箱を開けた。

「あっ、メイクボックスだ! 今すごく流行ってて私、ずっと欲しかったんです」

「私も沙彩ちゃんくらいの年齢のときはお化粧品に憧れてたんだけど、お化粧品って大人のものってイメージだったから買ってもらうこともできなくて。でも今は女の子用のメイクアップセットなんて置いてあってびっくりしちゃった。今時の子は小学生でもお化粧するんだね」

「わぁ、小学校の友達でも持ってる子いて羨ましかったんです。さすが紗雪お姉さん! 気持ちがわかってる! ありがとうございます!」

 満面の笑みで中のメイクボックスを開け、お化粧品の一つ一つをキラキラとした目で見つめる。
 子供用ではあるがパッケージも安っぽくなくて本格的だ。

 中にはリップやアイシャドウ、パウダーなどが入っており、どれも子どもの肌に優しいと書かれていた。万が一口に入れてしまっても安心のものらしい。
 ショッピングモール内にあるおもちゃ屋でも今、女の子たちに大人気だと書かれていた。

「センパイがくれたんだ。大切に使えよ」

「分かってるよ! そんな羨ましそうな目で見てきたってお兄ちゃんにはあげないんだから」

「羨ましそうな目って……」

 なんだ長谷川くんもメイクボックスに興味があったのかと私は少し瞠目する。
 たしかにバレエの舞台では男性でも自分で舞台メイクを施すため、興味を持つこともやぶさかではない。

 それに最近ではメイクをする男性も増えているし、そうおかしなことではないだろう。
 温かい目線を送る私に気が付いたのか、長谷川くんは「そういう意味じゃないんですが」とボソリと呟いていた。

 どういう意味なんだろうと目を瞬いていると沙彩ちゃんが小さく肩をするめる。

「これは口下手なお兄ちゃんがいけないのか、鈍感な沙彩お姉さんがいけないのか……まあどっちもだね」

 沙彩ちゃんは大人びた表情で言った。
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