スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
帰国後、私たちは予約していたホテルに泊まったが、ダブルベッドであるのになにもすることなく。
翌日、ホテルからその足で結婚届を提出。
晴れて私たちは夫婦となった。
いつの間にか啓一郎さんは都内のタワーマンションの一室を新居として購入しており、私たちは暮らすこととなる。
そして今現在、私は温かな繭の中で新婚生活を送っていた。
けれど──それなりに幸せであるはずなのに私には不安なことがあった。
啓一郎さんは私に「かわいい」やら「結婚して良かった」と言ってくれるのだが、彼の口からは一度も「好き」や「愛してる」といった言葉を聞いたことはない。
私もまだ自分の気持ちさえわかっていないのに相手にそれを求めるのはどうなのだろうと思う。啓一郎さんの気持ちもよく分かっていない状況であるのに。
けれども──私はどうしても不安で。
不安の中にいると疑問ばかり浮かんでくるのだ。
────何故啓一郎さんは私と結婚したのだろうか。
それを聞くタイミングを失ってしまってからというものの、何かが心に引っかかり続けている。
もし仮に「三十路になって未婚だと格好が悪い」だとか「若くて手頃な女がよかったから」と告げられたならば私はどうすればいいのだろう。
それを考えるだけでなぜだか怖くなり、尋ねることはできなくなっていた。
私はもやもやとする考えを心の中に押し込み、今日もまた啓一郎さんに接しているのだ。
しばらくして、ようやく帰国してからの忙しかった日々が落ち着いてきたころ。
最近は新しく勤務が決まった有名大学病院関系で忙しく動き回っていた啓一郎さんは言った。
「ようやく休みが取れることになったよ。だから行こう────新婚旅行へ」