スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 そして数分後。
 正気を取り戻した紗雪の瞳を見て、とりあえず続きはお預けだと肩をがっくり落としたのだ。

 それから俺は紗雪に気を失った後の状況を聞いた。

「救急車が5分後くらいに到着して、啓一郎さんはすぐに運ばれました。それから梅本は警察官3人に連行されて、現行犯で逮捕されたようです。でも……」

「梅本がなんか言ってた?」

「はい。連れてかれるとき警察官の方に『どうせすぐ釈放される』って言い放ってて。近くにいた熊沢さんは怒って……そのあとどこかに電話してました」

 俺は自分の顎を掴み、考え込む。
 おそらく上手く行くはずだろうが────。

「啓一郎~! 見舞いに来たぞ!」
「失礼します」

 見覚えのある愛嬌のある顔立ちの男と金髪の美しい女────熊沢と妻のステファニアだった。

 突然のことに驚いた紗雪は椅子から立ち上がり、二人からフルーツの詰め合わせをもらう。来てくれたことと見舞いの品に対して丁寧なお礼を伝えた紗雪は奥へと案内した。
 
 部屋は一人部屋で、奥には客用のソファやテーブルの他に大型テレビなども置かれている。

 ソファに腰掛けた熊沢たちを横目に俺はベッドから立ち上がろうと床に足をつける。
 貧血のせいかふらりと地面が揺れる感覚がしたが、そばにいた紗雪に支えられて二人の座ったソファの対面に腰掛けた。

「で、無事いけそうか?」

 俺は熊沢に尋ねる。
 熊沢はニヤリと口元に弧を浮かべた。

「もちろん」

 呆れた顔のステファニアさんと置いていかれたような紗雪が俺たち二人を見つめていた。
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