スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 2日後。
 いまだ入院中の俺の部屋をノックし、慌てて入室してくる紗雪の姿があった。

「啓一郎さん、これみてください!」

 紗雪の取り出したのは1部の新聞だった。そこの一面を指差して言う。

「梅本と梅本のお父様が逮捕されたみたいです。啓一郎さんと熊沢さんのおかげですね」

 そう言って紗雪は頬を緩めて喜ぶ。

 俺たちは梅本を逃がさないために色々動いたのだ。まあ俺たちと言いながら、中心となってくれたのは熊沢なのだが。

 熊沢の父親は警察庁長官だった。
 元々は警察官のエリート家系で生まれたのだが、なぜか一人だけ医者になったという変わり者が熊沢だった。

 あの日────梅本に絡まれて長谷川くんに助けられたという連絡をもらった日。
 俺は紗雪からの電話をもらったあと、すぐに熊沢へと連絡をした。

『紗雪のことを梅本っていう医者が付け狙い始めるかもしれない。だからそいつに監視をつけてくれないか?』

『梅本って……あいつか、関西の大学病院の院長を父親に持つボンクラ息子! 懇親会でも顔を見かけたけど、結局一度も話さなかったんだよな……まあ、少し親父に話しといてやるよ。多分少しくらいなら監視つけられると思う』

『ありがとう。恩に着る』

 熊沢はその父親に頼み、梅本の身辺を探ってくれた。だからこそ紗雪が誘拐されたということをいち早く知ることができたのだ。

 ちなみに熊沢の実家には専属のSPや特殊部隊の訓練兵などがうろうろしているなどという噂があったのだが。このスムーズな対応を見るにあながち間違いではないのかもしれない。
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