スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
新婚家庭
 私が買い物を終えて帰宅するとすでに夕方だった。急いで夕食の支度をするためにエプロンを身につける。

 元々啓一郎さんは医者という職業のためか不定休であり、最近では丸一日帰ってこないこともあった。
 食事が取れないときもあるほどで、栄養バランスが心配になった私は自分から作りますよと前のめりに伝えていた。

 啓一郎さんはどんなにその料理が不味くても『美味しいよ』と言ってくれるひとだ。
 以前、砂糖と塩を入れ間違えるという定番ミスを犯したときも顔色ひとつ変えずに食べきてってくれて、いざ私がその料理にありついたとき、ようやく気がついたという事件もあった。

 そのとき私は反省したのだ。
 リラックスするための家で気を遣わせてしまった事実に。

 そこから私は料理に関して試行錯誤を始めた。そのおかげか最近では自分の料理を食べてくれる人がいることの喜びさえ感じ始めている。
 料理自体も少しずつ上達している実感も抱いていた。

 私も結婚生活に慣れていっているなとしみじみ思う。そしてそんな自分はとても恵まれているのだとも。

「さーゆきっ。今日はなに作るの? 手伝おうか?」

「大丈夫です! 退院したばっかりなんですから、座っててください」

 啓一郎さんは調理中の私の背後に周り、後ろから抱きしめるようにして手元を覗き込んでくる。
 顔が近くて思わず心臓が跳ねるが、私は何事もないかのように言った。

 つい昨日、ようやく退院の許可が降りた啓一郎さんは自宅で安静にしてくださいと言われている。
 普段から朝から晩まで医者として働いている啓一郎さんは正直言って仕事中毒だった。
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