スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 甘々な啓一郎さんはごく稀に私に意地悪をすることがある。基本的にタイミングは私と数日間触れ合うことがなかったときや余裕がなくなったときなどだった。

 ここ最近はずっと病院暮らしだった啓一郎さんとはキス以上の触れ合いはない。もちろん彼の傷が心配だったということもあるが、病院という公共施設で破廉恥な行いをすることに抵抗があったからだった。

 だからこそ痺れを切らした啓一郎さんは私に意地悪してくるのだろう。

「もうっ、いじわるしないでください! わ、私だって啓一郎さんと……いっぱい触れ合いたいの我慢しているんですからっ」

 勇気を出して本心を曝け出す。
 けれど後半は照れの気持ちがが大きくなってしまい、比例して声が小さくなり私は俯く。

「…………っ」

「……?」

 しばらくしても反応がなく、私は赤らめた顔を上げると。

「あ、あんまり見ないでくれ……」

 啓一郎さんの整ったその容貌は真っ赤に染まっていた。髪の隙間から見える綺麗な形の耳さえも、同じような赤色だ。

 どうやら照れているようで、私は思わず口元を緩める。幾度が啓一郎さんの照れる姿は見たことがあったが、ここまで顔や耳を赤らめることなどはほとんどなかった。

 貴重な啓一郎さんの姿に気を良くした私は思わずその薄い唇に己のものを重ねる。

「夜まで……まっててください。今夜は私がその……頑張りますから」

「……うん」

 啓一郎さんは素直に頷き、私の首元に顔を埋めた。まるで甘えん坊の子供が出来たようで、私の心は愛おしさで苦しかった。
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