スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 食事を終え、私たちはそれぞれ入浴をした。啓一郎さんは怪我をしたのが腹部であり何針も縫うこととなったが、すでに抜糸は終わっていたため入浴は可能だった。 

 風呂から出た啓一郎さんは包帯を巻くために上半身裸だった。から髪からは雫が滴り落ちており、肩にかけたタオルでガシガシとその頭を拭く。
 お皿洗いをしていた私は思わずその姿に目を逸らした。
 何度も見慣れた姿であるはずなのに、未だに慣れることはなかった。

 バレエの演目によっては男性ダンサーは上半身裸で踊るというものもあり、男性の肌というものは見慣れているつもりだった。
 けれどそれは恋愛的に好きではない人の裸だったからで、意中の男性の裸というものがこれほどまでに心臓を高鳴らせるということを私は初めて知った。

 啓一郎さんは細身であるが意外と腹や二の腕にしっかり筋肉がついており、抱きしめられたときに少し硬いなと感じるところが────。

「……って私なに考えてるの……」

 私は小さくかぶりを振った。
 ちょうど皿も洗い終え、食器乾燥機に入れ終えた私はタオルで手を拭いながらリビングへ移動する。
 
 啓一郎さんは髪を既に拭き終え、腹に包帯を巻こうとしているところだった。
 病院では看護師さんが行っていたのだが、自宅では自らやらなければならない。啓一郎さんは医者であり、包帯などいくつも巻いているのだろうが────。
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