スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
戸惑いと悶々とした気持ちに気が付いたのか。
啓一郎さんは座っていた私の右足首をそっと手に取り、足の裏のアーチに手を添える。
そして──。
まるでお姫様に忠誠を誓う騎士のように────足の甲にゆっくりと唇を落とした。
「…………っ!」
反射的に身を引くが、意外にも強い力で触れられているため、離れることができない。
私の足はマメだらけだ。
トウシューズを履いて毎日踊っていたため、普通の人に比べて醜く汚い足なのだ。
けれども啓一郎さんは顔色ひとつ変えなかった。
私は啓一郎さんの強い視線に気づき、反射的に顔を赤らめる。
「────この足は天使の足だ。舞台をひらひらと舞い踊る天使」
「天、使?」
「うん。初めて紗雪の舞台を観たときにそう思ったんだ。この歳になって恥ずかしい物言いかもしれないけど、はっきり」
そう言って今度は私のふくらはぎにキスをする。
そんなところ今まで誰にもキスされたことなどなかった。
びくりと身体が震え、体の奥から何か淫らなものが溢れてくるのを感じ、ぎゅっと目を閉じる。
そんなこともお構いなしに啓一郎は言葉を続ける。
「大丈夫、君の足はきっと元通りになる。大丈夫」
安心させるように、何度も何度も大丈夫だと語りかける。
その手つきは全く性を感じさせない穏やかなもので。
けれども──私の心臓は今にも壊れそうなほど脈を打っていた。