スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「すごく寂しいんだ。ずっと俺に寄りかかって一緒に歩んでいてくれた紗雪が離れていってしまわないか。不安でしかたない」

「……っ啓一郎さん」

 私ははっと息を飲み、思わず抱きしめ返す。

 この人はとても強く、そして同時に弱い人だ。

 亡くなった妹さんの秘密を一人で長年抱え込む辛抱強さ。そして誰にも愛を告げることが出来ないという心の奥に宿るトラウマともいう弱さ。両方を兼ね備えている。

 今の啓一郎さんはまるで迷子になった幼子のようだった。今まで一人きりで歩いてきた道に私という供が加わり、そしてその供である私がまた別の道へ歩もうとしている。そのことが恐ろしくて仕方がないのだろう。

「大丈夫です。一人になんてしません。確かに夢は見つけましたけど、私はこれからも死ぬまで啓一郎さんと一緒ですから」

「うん……」

「それにさっき言ったじゃないですか。啓一郎さんも私も子どもがほしいって。子ができれば二人じゃなくて今度は三人になります。それ以上だってあり得ます。……だからあなたはずっと一人になんてなる暇ありませんよ」

 怯えるようにしてしがみついていた啓一郎さんの体から力が抜ける。私の言葉を聞いて安心した様子だった。

「そう、だよね。俺は一体なにを怖がってたんだろう。ははっ……おかしいね」

 まるで泣きながら笑うように言う。
 私はそんな彼を見て、出会えてよかったなと心の底から思った。

「ありがとう、紗雪。俺と出会ってくれて」

「私も今おんなじこと思いました。……こちらこそ、ありがとうございます」
 
 そう言って私たちは暖かいベッドの中で笑い合う。お互いの温もりに心が解けていく。

「啓一郎さん、愛してます」

「俺も。紗雪のこと愛してる」

 そうして私たちはまたキスをした。
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