スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
新婚夫婦
 夏が過ぎ、秋風が吹き始めた頃。
 私は音楽に合わせて声かけていた。

「はい、次はロンデジャンプアテールいきますよ。準備して」

 スタジオの中で私はレオタードに身を包んだ子どもたちに声をかける。みな髪の毛をお団子にまとめ上げており、その表情は真剣だ。
 
「はい、今日のレッスンはここまで。注意されたことを忘れないようにして、次回のレッスンで生かせるように頑張ってください。お疲れ様でした」

 私がレヴェランス────バレエのお辞儀をすると、子どもたちも同じように頭を下げた。
 そのままぞろぞろと練習場を出て行き、私も片付けをしたあと、事務員の方に戸締りをお願いして外に出た。

「お疲れ様、紗雪! 今日も代わりにレッスン見てくれてありがとうね」

「そんな、とんでもないです。私もいい経験になりますし」

 目の前で微笑みを浮かべるのはステファニアさんだった。
 私は今、ステファニアさんのバレエスクールで先生として働いている。

「ところで、今日は体調大丈夫ですか? 先日はかなり辛そうでしたが……」

「そうね、今日はいい感じ。この子もかなり主張し始めてたまにお腹を蹴ったりするの」

 嬉しそうに話すステファニアさんのお腹は大きく膨らんでいた。
 そう、ステファニアさんはこの春めでたく妊娠したのだ。本来ならば子供は難しいだろうと言われていたが、継続していた不妊治療のおかげか新しい命を宿すことが出来たのだ。
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