スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「紗雪!」

「け、啓一郎さんっ!? ど、どうしたんですか」

 まさか啓一郎さんにお披露目しようと心の準備をする前に向こうからやってくるとは思わず、口を戦慄かせた。

 そんな私の心など知ることもなく、啓一郎さんはその美貌に朱を染める。

「さ、さゆ、き…………」

「啓一郎さん……すごく似合ってますね」

 私と揃いの白をベースとしたフロックコートのタキシードを身に纏っている。目元の黒子が色気を増長させており、私は思わず見惚れてしまった。
 
 啓一郎さんが口をもごもごさせているのを尻目に私は心臓を高鳴らせながら口にする。
 するとようやく正気を取り戻した啓一郎さんはずいっと私の前に移動し、レースの手袋に包まれた私の手を掴んで自分の胸元に引き寄せた。

「かわいい……それにとても綺麗だ。言葉にできないくらい」

「大袈裟ですよ」

 啓一郎さんは「そんなことない」と言いながら首を横に振った。
 身内の欲目もあるなと内心思ったが、私は一途な目線を向ける啓一郎さんに笑いかけた。

 こんな些細なことでも愛されているのだと実感する。
 とても幸せなことだった。

「おーい、お熱いところ申し訳ありませんが……そろそろ式が始まりますのでご準備を────」

「あっ、すみません! もう啓一郎さん! こんなことしてないで早く行ってください」

「もっと紗雪の姿を目に焼き付けておきたかったけど、時間ならしょうがないか。……先に待ってるから」

 私の手の甲を指先でふわりと撫で、啓一郎さんは部屋を出て行く。

 私もバージンロードを歩くために規定の場所に着く。両親は私のウエディングドレス姿を目にして瞳を潤ませていた。
 
 何度も「よかったね」「綺麗だね」と言ってくれて私も釣られて涙が溢れそうになった。
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