スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
私は彼の柔らかな髪をゆっくりと撫でてあげる。
猫毛なのか髪が柔らかい。私は元々直毛のため羨ましい。
「ねぇ紗雪」
「どうしたの?」
「俺との生活はどう? 後悔はない?」
私は「ないですよ」と答える。
啓一郎さんとの暮らしはとても楽しい。
最初は他人と同じ家で共に暮らしていくことに不安を覚えないわけではなかった。優しいとはいえど啓一郎さんは男性で。
それに医者としての啓一郎さんのことはそれなりに知っていたが、プライベートな面での彼は知らない。
実はなにか思いもよらないような面があったらどうしようかと緊張していたものだ。
昔の私がいきなり同棲だなんて聞いたらびっくりしすぎて腰を抜かすだろう。
だけれど。
啓一郎さんとの暮らしはパリでアパートに一人暮らしをしていた頃では考えられないほど充実していた。
いざ生活してみると実は料理も洗濯も、そして掃除さえなんでもパーフェクトに出来てしまうところに驚いた。
むしろ料理なんて私の方が絶対下手で。己の女子力のなさにほとほと呆れたものだ。
実はそのあと啓一郎さんの料理上手さに対抗してひっそり練習しているのは秘密である。