スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「そう……よかった。紗雪みたいな女の子がいきなり俺みたいな大の男のと一緒に住むってなると警戒しないわけないだろ? 家が居心地のいい場所じゃなきゃ辛いだろうからね。もし何かあったら言ってくれな?」
「ありがとう。むしろ私、よくしてもらいすぎて……申し訳ないくらいです」
「言っただろ? 俺は紗雪を支えたいって。逆に俺と一緒にいてくれてありがたいくらいだよ。…………ほんと、ありがとな」
そう言って啓一郎さんはまるで子供のように私の腰に手を回し、お腹に顔を埋めた。
しばらくすると啓一郎さんは「膝枕ありがとう」と言って体を起こした。
「それじゃあ寝ようか。紗雪、こっちおいで」
そう言って自身の掛け布団をめぐり、隣をトントンと叩く。私は四つん這いの姿勢でそこへ移動し、もぞもぞと隣へと潜り込んだ。
啓一郎さんの温もりを感じ、ここが一番安心するなと感じる。けれど。
それと同時に罪悪感が込み上げてきた。
私は本当に何もしなくてもいいのかと。
こくりと唾を飲む。
行動に移すのには勇気が必要だった。
私は胸にある勇気を全てかき集めて────。
胸元に埋めていた顔を上げ、啓一郎さんに向かって問いかけた。
「私、啓一郎さんに何もしてあげられてないよね? いつもだって一緒に眠るだけで。だから────」
浴衣を手にかけようとする。妻として、役割を果たすべきだと思った。
けれどそれは途中で止められた。そして啓一郎さんは私の頭を撫でる。
「無理しなくてもいい。大丈夫。俺は紗雪の気持ちがついてくるまでいつまでも待つから」
不安な気持ちはお見通しだったのだろう。
だけど、私は不安なだけではなかった。
啓一郎さんにもっと触れてみたい。
その温もりを直接感じたみたい。
そう思う心も確かにあったのだ。
だけれど啓一郎さんはやんわりと拒絶する。
それに少し落ち込みかけたが、頭を撫でる優しい手は私の睡魔を呼び起こし────。
いつのまにか眠りについていた。